第166章 ママが赤ちゃんを産むの

伊原綾音は、彼がこちらへ歩いてくるのを見るなり、またあの話だと思って胸がひゅっと縮んだ。小さく首を振る。

「……嫌」

男は目の前まで来ると、いきなり彼女の腰を抱き寄せた。

「そんな即答、俺が傷つく」

昨夜、彼が後始末をしてくれたことが脳裏をよぎる。綾音は突き放せず、代わりに両腕を彼の首へ回した。

「澄川琉生。私は久岡家と大きな確執があるの。和解なんて無理。奏斗は子どもだから傷つけたくないし……あなたも。今は久岡彩愛と関係がなくても、これから先は分からないでしょう?」

言いながら、綾音はふっと思いついたように続ける。

「……だったら、あなたたち親子、澄川家に戻って住んだら?」

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