第6章

そよ風が頬を撫でる夜、山本友田は寮まで送ると言って譲らず、私はそれを何度も丁重に断っていた。

「本当にお気遣いなく、山本先生。一人で帰るのには慣れていますので」私は道端に立ち、感謝の意を込めて軽く頭を下げた。

山本友田は首を横に振り、眼鏡の奥から穏やかだが、しかし断固とした眼差しを向けた。

「こんなに遅い時間に、後輩を一人で帰らせるわけにはいきません。それに、ちょうど帰り道も同じ方向ですし」

私たちがそうして膠着状態に陥っていると、数人の若者がそばを通り過ぎていった。彼らの話し声は大きすぎも小さすぎもせず、ちょうど私たちの耳に届くくらいだった。

「今日の藤原のやつ、マジで変だ...

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