第4章

完全武装の私は、野球帽にマスク姿でT大学の学生たちに紛れ込んでいた。私が「ストーカー」として神代時臣の講演会に現れるのは、これが初めてだ。

講演会場はすでに満席で、前方の席はスーツ姿のビジネスエリートや医療分野の専門家たちで埋め尽くされている。そして、日本の財閥の跡取りである神代時臣は、一番前の席に、松のように真っ直ぐな背筋で腰を下ろしていた。

「あれが神代財閥の若様か」

隣の学生が小声で囁き合う。

「今年まだ二十七歳なのに、もう神代グループの医療テクノロジー部門を掌握してるんだって」

「それに、めちゃくちゃイケメン!」

別の女子学生が付け加える。

「医学部のために新し...

ログインして続きを読む