第7章

高級車は東京の高級住宅街を滑るように走り、私は後部座席で静かに腰掛け、無意識にスカートの裾を指で弄っていた。

「梨花、結婚式について何か考えはあるかい?」

神代時臣が優しく問いかけ、私の手の甲にそっと彼の手を重ねる。

ずしり、と心が沈んだ。ただの別れの危機だと思っていたのに、今や婚約破棄どころか結婚からの逃亡の危機へと発展している。

「時臣さん、私たち、知り合ってからまだ日が浅すぎると思うの」

私は慎重に言葉を選んだ。

「まだ半年じゃない。もっとお互いを知るべきよ」

時臣の瞳に、捉えどころのない感情がよぎる。

「浅い、か。私にとっては、もうずっと、ずっと長い間待って...

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