第5章

その夜はほとんど眠れなかった。ドア越しに、浩二がリビングを行ったり来たりしているのが聞こえ、時折、かすかなため息が漏れてくる。でも、彼が私の部屋のドアをノックすることはなかった。

朝、目が覚めると、ドアの前に湯気の立つコーヒーカップが置かれていて、その隣にはメモが添えられていた。『ごめん。君が聞く準備ができたら、全部話す。――H』

でも、もう待てなかった。午後二時ちょうど、私は『故郷の豆』に姿を現した。絵里から、浩二が語ろうとしなかった真実を聞き出すために。

隅の席に座り、コーヒーカップを強く握りしめる。心臓が激しく脈打ち、全身に響き渡るようだった。。

向かいの席には、絵里...

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