第133章

玄関のドアがバンッと乱暴に閉まり、九条湊は全身に刺々しい気配をまとったままマンションを出ていった。

翌朝。

一ノ瀬紗月が寝室のドアを押し開けると、リビングには挽きたてのコーヒーとバタークロワッサンの香りがふわりと漂っていた。

九条湊はアイランドキッチンの前に立ち、清潔な白いシャツを着て袖をまくっている。

フレンチオムレツを皿に盛りつけていた。手つきはどこかぎこちない。けれど、媚びるような意図だけははっきり透けて見える。

足音に気づき、彼が顔を上げた。

「紗月、起きたのか」

九条湊は無理に柔らかな笑みを作る。まるで昨夜、互いの顔を引き裂くような言い争いなどなかったかのように。

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