第155章

それは、値札まで付けたような遠回しの拒絶だった。

神谷蓮はそれを聞いても、表情ひとつ変えない。

「分かってる」神谷蓮の声は相変わらず落ち着いていた。「今すぐ決めろなんて言ってない。お前はお前で仕事を続けて、子どもも産めばいい。俺は俺のやることをやる。互いに干渉しない」

彼にとって、拒まれたこと自体は問題じゃない。

獲物はもう自分の縄張りに足を踏み入れている。待つ時間なら、いくらでもある。

「先にスープ飲め。冷めるぞ」神谷蓮は椀を指で示した。

一ノ瀬紗月は、彼の泰然とした態度を見つめる。胸の奥に張りつめていた糸が、少しずつほどけていくのが分かった。

彼女は椀を持ち上げ、それ以上は...

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