第160章

一ノ瀬紗月は、表情ひとつ変えなかった。

九条湊のやり口など、痛いほど知っている。あれは極端な手段で、胸の奥に残った取るに足らない罪悪感を薄めるためのものだ。ついでに、世間の前で地に落ちた自分のイメージを、少しでも引き上げたいだけ。

「好きにさせて。九条家のことなんて、私には関係ない」

一ノ瀬紗月の声は、氷みたいに冷たかった。

「ダメよ。そんなの、飲み込めるわけないでしょ」

滝尾唱子が勢いよく立ち上がり、奥歯を噛みしめる。

「明日すぐ航空券取って帰る。あいつがのうのうと追悼式? 寝言も大概にしなさいよ。ぶち壊してやるんだから!」

隣でメールを捌いていた神谷蓮が、ノートパソコンを静...

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