第58章 人心を惑わす蛊惑

「だから……休戦できない?」嶋田清香の声がみるみる小さくなる。「あんたが私に手を出さないなら、私も出さない。それでいい? 本当にごめん……ごめんなさい……」

神崎結菜は、あのやけにプライドの高い“小さなお姫様”が謝ること自体が意外で、くすりと笑った。

「いいよ」

嶋田清香はぽかんとした。こんなにあっさり頷かれるとは思っていなかったのだろう。

ちょうどそのとき、君島成子がドアを押して入ってきた。嶋田清香が神崎結菜の前に立ち、どうにも後ろめたい顔をしているのが目に入る。

それから、神崎結菜の涼しい表情。

状況が飲み込めず、君島成子は入り口で固まった。

「え……仲直りしたの?」

嶋...

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