第63章 からかい

南条葵ははっと勢いよく顔を向けた。隣の付き添い用ベッドには、神崎結菜が座っていて、うつむいたままスマホを見ている。

気配に気づいた神崎結菜が顔を上げ、ぱっと表情を明るくした。

「目、覚めた?」

「結菜……」

南条葵の声はひどく掠れていた。たちまち目の縁が赤くなる。

「私……その、何もされてないよね?」

「されてないよ」

神崎結菜はそっと彼女の手を握った。

「間に合ったから。大丈夫、安心して」

その一言で、南条葵の目からぽろぽろと涙がこぼれ落ちた。喉が詰まり、うまく言葉にならない。

「ありがとう……ほんとに……怖かった……」

そればかりを、何度も何度も繰り返す。

神崎結...

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