第89章

神崎恒雄は一瞬きょとんとした。最近は忙しさに追われ、健診に行く時間すら取れていなかったのだ。

「分かった。お前の言うとおりにするよ」

神崎清美が堪えきれずに笑う。

「昔なんて、お父さんに健診受けさせるの、命懸けみたいだったじゃない。『忙しい』の一点張りで」

神崎結菜は口元をわずかに上げる。

「明日、私も一緒に病院へ行くね」

「頼む」

結菜が二階へ上がろうとしたところで、ちょうど神崎徹が階段を下りてきた。彼女を見つけると、近寄ってくる。

「結菜、今日はありがとう……明日、何か食べたいものある? 俺が買ってくる」

結菜は思わず笑ってしまう。

「もうお礼言ったでしょ。家にだって...

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