第93章

「そう……」

神崎清美はどこか寂しげに言い、声を柔らかく落とした。

「じゃあ、おじいさまのこと、しっかりお願いね。それと、自分の身体もちゃんと労わりなさい。わかった?」

胸の奥に、ふわりと温かいものが差す。

神崎結菜は小さく息を吐いた。

「うん、分かってる」

通話を切ると、結菜は手術室の扉を見上げた。視界が滲むほど涙が溜まっている。

乱暴に手の甲で拭い、そのまま「しろ」に発信する。

数コールで繋がった。

受話器の向こうから飛んできたのは、やけに若い少年の声。驚きがそのまま弾けている。

「ボス? マジで電話くれるなんて!」

結菜の声は、凍りついたみたいに平坦だった。

「...

ログインして続きを読む