第106章

オミネグループの回転扉が重々しく回り、ガラス面に繁華街の喧騒を映し出している。

朱月はベージュのトレンチコートの襟元をかき合わせ、厚みのある信書用封筒を強く握りしめた。

その傍らでは、紗世が周囲を警戒するように鋭い視線を配っている。

二人がホールの中心へ進み、受付に近づこうとした矢先、エレベーターホールから鼓膜を突くようなヒールの音が響いてきた。

「あら、誰かと思えば」

二人のアシスタントを従え、紗奈が姿を現した。

今季の最新オートクチュールに身を包み、湯気の立つホットコーヒーを片手に、この上なく傲慢な笑みを浮かべている。

朱月は足を止め、冷ややかな視線を彼女に向けただけで、相...

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