第107章

先ほど、朱月が立ち去る際に残した極寒の眼差し。それは鋭利な刃物となって、大志の心臓を深々と抉った。

それに引き換え、紗奈のこの大根役者ぶりはどうだ。今の彼には、ただの苛立ちの種でしかなかった。

「俺の前で、あいつを悪く言うな」

「あいつの名を口にする資格が、お前にあるとでも?」

大志は紗奈を指差した。その声は地を這うように低く、恐ろしい響きを帯びており、一語一語が歯の間から無理やり絞り出されたようだった。

言い捨てると、大志は紗奈を一瞥もしなかった。踵を返して大股でエレベーターへと向かい、ロビーには呆気にとられた社員たちと、顔面蒼白の紗奈だけが取り残された。

怒号を浴びせられた紗...

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