第108章

「朱月……」

大志の声は掠れ、嗚咽交じりに途切れ途切れだった。

「行かないでくれ……許してくれ……」

紗奈の動きが凍りつき、その表情が一瞬、醜く歪んだ。

自分のベッドの上で、自分が看病している最中に、彼は別の女の名を呼んだのだ。

「大志、よく見て。私は紗奈よ!」

彼女は歯噛みし、彼を正気に戻そうとした。

だが、大志の耳には届いていない。

彼は命綱にすがるように彼女の手を強く握りしめ、胸を引き裂くような懺悔を繰り返すばかりだった。

「俺が悪かった……あんなふうに怒鳴るべきじゃなかった……」

「紗奈とはきっぱり別れる……本当だ……誓うよ……」

「君だけを大切にする……朱月…...

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