第40章

喧騒に包まれた歩道で、朱月は江藤院長を支えながら、もう十分も立ち尽くしていた。

頭上には鉛色の空が重く垂れ込め、冷たい風が細かい雨粒を巻き込んで容赦なく体に打ちつける。

「うっ……」

隣で江藤院長が押し殺したような苦悶の声を漏らし、その体がガクガクと震えだした。重みがかかり、朱月の方へと崩れ落ちそうになる。

ギプスを外したばかりの足に、この湿気と寒さ、そして長時間の立ち仕事はあまりに酷だった。

朱月の心臓が早鐘を打つ。

彼女は片手で院長の腕を死に物狂いで支え、もう片方の手で震えながらポケットの中のスマートフォンを探った。

伊織に電話しなければ。今すぐ。

彼以外に、助けを求めら...

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