第47章

その時、凛とした、それでいて幾分かの苛立ちを含んだ声が、膠着した空気を打ち破った。

「悪いけど、通してくれる?」

人垣を割って入ってきたのは、仕立ての良い黒のスーツを纏った人影だった。細いヒールの音を響かせ、小脇には厚いファイルを抱えている。

「コネでのし上がるより」

彼女の声は大きくはないが、一言一句が明瞭で、その場の空気を震わせた。

「才能と実力で飯を食ってる人間のほうが、よほど尊敬に値するんじゃない?」

デザイン部が静まり返る。

杏沙の顔は瞬時に茹でダコのように赤くなり、紗奈の甘ったるい笑みも引きつったまま凍りついた。

朱月は弾かれたように顔を上げ、突然現れたその女性を...

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