第49章

紗奈はコーヒーカップをテーブルに置くと、流れるような動作で大志の体に寄り添い、その首に腕を絡ませた。彼女の視線が、何気ないふりをして書類の上の写真へと注がれる。

「あら? これ、朱月じゃない?」

彼女はわざとらしく驚いたように口元を手で覆った。

「友達の引越しを手伝うって休みを取ったんじゃなかったの? どうして……どうしてアトリエなんかに? それに、伊織さんと一緒だなんて……」

彼女は言葉を切り、何かを思い出したかのように、声に悲しみと不安の色を滲ませた。

「大志、前にも言ったでしょう? 朱月は……あの子、心の中ではあなたのことなんてこれっぽっちも想ってないのよ」

「今まであなた...

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