第53章

「そうなれば、あいつは自分の保身で手一杯になる。浮気相手を庇う余裕なんてなくなるわ」

そうだ、どうして忘れていたのだろう。

かつて、『社外秘』のラベルが貼られた古いファイルをこの目で見たことがあったはずだ。そこには、オミネグループのあらゆる後ろ暗い秘密が眠っていた。

「あのファイルは全部、最上階の資料室に厳重に保管されているわ」朱月は記憶を辿る。「でも……セキュリティが厳しいの」

「いくらセキュリティが堅牢でも、『緑川夫人』を拒めるかしら?」

紗世は片眉を上げ、不敵な笑みを浮かべた。

「あなたはまだ、あいつの戸籍上の妻よ。夫の会社に『私物』を取りに帰るだけだもの。誰が止められるっ...

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