第58章

シールが剥がされている。トランクのどこを探しても見当たらない。

朱月は眉をひそめ、素早くコンテナを運び出し、地面に下ろした。

まずは指の関節で、箱の底を軽く叩く。

返ってきたのは、中が空洞であることを告げる虚しく鈍い音だった。

朱月の心臓が、冷たい鉛のように胃の腑へと沈んでいく。

震える指先でロックを外す。

「パチン」という乾いた音と共に蓋が弾け飛ぶ。

中は、予想通り空っぽだった。

そういうことか。

あの当たり屋騒ぎはただの囮。時間の浪費も、喧騒も、混乱もすべて、コンテナをすり替えるためのカモフラージュだったのだ。

会場へ行くのを阻止するためではない。空の箱を抱えて審査員...

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