第67章

タクシーが豪邸の門前で止まった。

朱月は、かつては馴染み深かったはずの、しかしいまや他人行儀なほどによそよそしく感じるその場所へと、迷わず足を踏み入れた。

使用人たちの驚愕の視線を意に介することなく、彼女は二階へと上がり、八年間過ごした寝室へと戻る。

そして引き出しの最奥から、ずっと用意していながら取り出す勇気のなかった書類を取り出した。

離婚届だ。

彼女はリビングのソファに静かに座り、その数枚の紙を強く握りしめながら、夫の帰りを待った。

夜八時、玄関で物音がした。

大志の帰宅だ。

彼はスーツの上着を脱ぐと無造作に使用人に投げ渡し、ソファに座る朱月の姿を認めて一瞬動きを止めた...

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