第73章

「ガコンッ――」

凄まじい轟音が響き、ボウリングのピンがすべて弾け飛んだ。その音は無人のレーンに反響し、耳をつんざくような残響を残す。

朱月は足を引きずりながら飛び込んできた。足首に走る激痛は、今にもその場に崩れ落ちそうなほどだったが、そんなことを気にしている余裕はない。

「大志! やめて!」

必死に走ってきたせいで、彼女の声は掠れ、震えていた。そこには自分でも気づかないほどの哀願が滲んでいた。

伊織が大志の目の前に立っている。朱月は駆け寄り、伊織を庇うように立ちはだかりたかった。かつて彼が、幾度となく自分を窮地から救ってくれたように。

だが、一歩踏み出した瞬間、二つの黒い影が大...

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