第83章

朱月は手を伸ばし、その小切手を手に取った。

彩乃は嘲るような笑みを浮かべる。

「それでいいのよ。賢い人間なら……」

「ビリッ――」

紙が裂ける音が、彼女の言葉を遮った。

朱月は無表情のまま小切手を二つに引き裂き、重ねてはまた裂き、ただの紙屑になるまで繰り返した。

彼女が手を離すと、紙片がパラパラとテーブルに舞い落ちた。

「あなたっ!」彩乃が勢いよく立ち上がる。「よくも……」

「私と大志の結婚に、口出しする権利はありません」

朱月はその婦人を直視した。声は大きくないが、一言一句が鮮明だった。

「私は金で買われ、踏みつけにされるような商品じゃない。ここを出て行くとしたら、それ...

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