第88章

「どういうこと? 予備電源はどうなっているの?」

相沢江良は眉をひそめ、執事の長谷川を問い詰めた。

長谷川が口を開くよりも先に、入り口の方角から足音が響いてきた。

急ぐ様子もなく、靴底が床板を打つ音が一定のリズムで近づいてくる。

やがて、アトリエの入り口に長身の人影が現れた。

逆光と闇がその表情を曖昧にしているが、広い肩幅と引き締まった腰のラインは見て取れた。

「失礼、お邪魔だったかな」

男の声は低く、微かな笑みを孕んでいた。

「近くを通りかかったものでね。江良のところに大事な客がいると小耳に挟んで、挨拶に来たんだ。ついでに……光の差し入れさ」

彼がそう告げると同時に、背後...

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