第19章
彼女は表情を変えることなく、淡々と視線を戻した。
以前はどれだけ頼んでも、彼女とのデートで『月の下』に来てくれることはなかったのに。
それなのに今、彼は心から愛する人、周防侑子を連れてきている。
周防侑子だけが、彼にとっての例外なのだ。
悔しいという感情すら湧いてこない。
ただ、かつての自分が哀れでならないだけだ。
四年の歳月を費やした献身、彼が麻痺してからの介護……それら全てが強烈な平手打ちとなって戻ってきて、眉間を直撃したような気分だった。
周防緋音は顔が腫れ上がったような錯覚を覚え、視線を落としたまま重い足取りで後ろを歩いた。
「前を見ろ」
辻本十流は背後からついてく...
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