第29章

目前的経済状況はまさに厳冬期だ。大半の企業が保身に走り、この時期に自ら進んで虎の子の資金を吐き出そうとする者など、まずいない。

白川和夜のような巨大なビジネス基盤があれば話は別だが、小林青羽にそこまでの力はない。

「分かりました」

二億なら二億でいい。

ないよりはマシだ。

小林青羽が持参した契約書に、周防緋音は素早くサインを走らせた。

「銀行の送金手続きには、少し時間がかかるかと」

小林青羽が探るような視線を向けてくる。

周防緋音は指先でテーブルを軽く叩き、頷いた。

「なるべく急いで」

データの更新サイクルは早い。一刻の猶予もなかった。

午後、今日は祖母の八十歳を祝う傘...

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