第30章

会場を出ようとしたその時、周防緋音は給仕に行く手を阻まれた。

「周防様、大奥様の咳がまた酷くなりまして……お手数ですが、少し来ていただけませんか」

見覚えのない顔だったが、緊急事態とあっては無下にできず、彼女は給仕の後について行った。

連れてこられたのは、見知らぬ部屋だった。

どうやら裏庭にある倉庫のようだ。

その瞬間、周防緋音は違和感を覚えた。第六感が「逃げろ」と警鐘を鳴らす。

だが、一足遅かった。給仕がいきなり注射器を取り出し、彼女の首筋を目掛けて襲い掛かってきたのだ。

周防緋音は咄嗟に身を翻して一歩下がると、逆に男の手首を掴み、動きを封じた。

「誰の差し金だ!」

周防...

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