第39章

「父さん」

周防緋音は地下鉄への乗り換えを急ぐ通勤途中で、周防家当主からの電話に出た。

「いつまで外で遊び呆けているつもりだ! ろくな仕事もせず、白川家に嫁いでおきながら恥をかかせおって……。跡取り息子の一人も産めないで、どうやって足場を固めるつもりだ。俺とお前の母さんが誰を頼りにしてると思ってる!」

「今夜、実家に戻ってこい。話がある」

受話器の向こうから響く耳障りな罵倒に、周防緋音は無言のまま、通話を切った。

鬱屈した感情が、また一つ澱のように溜まっていく。

周防緋音と父の関係は冷え切っていた。というより、父と顔を合わせることすら稀だった。

幼い頃からたらい回しにされ、母方...

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