第52章

車から降りた周防緋音は、その場に立ち尽くしていた。薄手のシャツを吹き抜ける風が、やけに冷たい。

一拍遅れて、じわりと背中を冷や汗が伝い、下着まで濡らしていくのを感じた。

白川和夜がここまで周防侑子を贔屓するなんて、想像すらしていなかったのだ。

心臓を鋭利な刃物で切り裂かれたような痛みが走る。

今は盛夏だというのに、胸の傷口からは凍てつくような寒風が絶え間なく吹き込んでくるようだ。緋音は鉛のように重い体を引きずり、会社へと足を向けた。

歩みは遅々として進まない。背後から通行人に肩をぶつけられ、よろめく体は一陣の風でも倒れてしまいそうだった。

魂が抜けたような状態で開発部に辿り着き、...

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