第58章

周防緋音の苦労を痛いほど理解している遠川は、それ以上何も言わず、ただ心を痛めて声をかけた。

「緋音ちゃん、辛いことがあったら私に話してくれ。何もかも心の中に隠して、一人で抱え込むのはよくない」

「大丈夫ですよ、遠川おじさん……これくらい、私にとってはもう何でもありませんから」

周防緋音は口角を引き上げ、憑き物が落ちたように笑ってみせた。

遠川は、彼女のその痛々しい作り笑いを見て、言葉にできない苦渋を噛み締めた。

彼女が口にしなくとも、彼には全て分かっていたのだ。

遠川の会社を後にしても、周防緋音の頭の中は起業のことで一杯だった。

しばらく考えを巡らせていると、携帯電話が鳴った。...

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