第60章

周防緋音の名は、今回の接待で一躍轟いた。

三十本ものワインを空けたその戦績は、投資界隈において彼女を不倒の「戦神」たらしめるに十分だった。

だがその代償は高くついた。彼女はそのまま病院へ緊急搬送され、上へ下への大騒ぎ。昏倒と嘔吐を繰り返し、あわやICU入りという瀬戸際まで追い込まれたのだ。

辻本十流はベッドの脇に立ち、命を削って戦った周防緋音を見下ろしていた。

無理にでも彼女を引き抜き、転職させたのは正解だったのだろうか――そんな迷いが脳裏をよぎる。

可哀想な後輩ちゃん。

そう心の中で呟き、窓辺に歩み寄ると、陽光を遮るようにカーテンを閉めた。

「シャーッ」というカーテンレールの...

ログインして続きを読む