第5章

葵視点

六時間後、白鷺市こども病院の廊下に、慌ただしい足音が響き渡った。

姿を現した湊司は、髪は乱れ、スーツは皺くちゃ、目は充血し、見るからに必死の形相だった。

「葵!」湊司は息を切らしながら私の元へ駆け寄ってきた。「あの子はどこだ?俺の息子はどこにいるんだ?」

私は病室のドアを指さした。「中に。でも湊司、覚悟しておいて……」

湊司は、重い鉛のように感じられるドアを押し開けた。視界に飛び込んできたベッドに横たわる颯真の姿に、彼の世界は一瞬にして凍りついた。

その瞬間、いつもは揺るぎない自信に満ちた、あの強気な男の瞳に、堰を切ったように涙が溢れるのが見えた。

颯真は眠...

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