第3章
一週間が経ち、私はすっかり魔王城での生活に馴染んでいた。
この一週間は、私の人生で最も素晴らしい時間だった。魔王様は本当に自ら、城の隅々まで案内してくださったのだ。
彼の声は低く、立ち居振る舞いは優雅で、何かを説明してくれるたびに、うっとりとした表情を隠すのに必死だった。
そして何より、この機会に乗じて大量の情報を収集できた。
「蛍様、本日はどちらをご覧になりたいですか?」
世話係のメイド、アリスが尋ねてくる。
「うーん……お城の他の場所も見て回ってもいいかしら?」
私は無垢な大きな瞳で瞬きをした。
この『好奇心旺盛な人間の姫』という身分は、完璧な隠れ蓑だ。この一週間で、私はすでに魔王城の地形を完全に把握していた。
最も気になったのは、魔王様のある奇妙な習慣だった。
毎夜、城全体が静寂に包まれる頃になると、魔王様は一人で部屋を抜け出し、城の地下のどこかへ向かうのだ。
その表情はいつも苦悶に満ちていて、まるで何かを渇望しながらも、ひどく葛藤しているかのようだった。
これがゲームのシナリオにおいて何を意味するのか、私にはよくわかっていた。
聖女リリスは、すでに魔王城に囚われているのだ。
「アリス、魔王様は普段、夜は何をなさっているの?」
私は何気ないふりを装って尋ねた。
「そ、それは……陛下の私的なことですので、私共がうかがい知ることはできません」
アリスは少し困った様子だった。
「ですが、陛下は最近あまり眠れていないご様子で、夜な夜なお一人で城内を歩き回っておられるとか……」
やはり!
これこそ、ゲームの中で魔王が聖女への執着ゆえに苦悩する場面だ。
今がまさに絶好のチャンス——このタイミングで私が彼に精神的な慰めと支えを与えれば、心の隙に入り込める!
だが、その前に、聖女が囚われている場所を確かめる必要がある。
その日の深夜、私はこっそりと部屋を抜け出した。
魔王城の夜は異常なほど静かで、時折巡回の兵士が通り過ぎるだけだ。私は黒いマントを羽織り、静かに魔王様の後をつけた。
魔王様は隠された石段を伝って、地下三階へと降りていった。
私は息を殺し、遠くから後を追う。地下の廊下は長く、魔王様は一見するとただの石壁の前で足を止め、掌を切り裂くと、その血を壁のある紋様に滴らせた。
カチャ——
石壁がゆっくりと開き、さらに深い通路が現れる。魔王様が中へ入っていく。私は数分待ってから、慎重に後を追った。
通路の突き当たりは、特殊な牢獄になっていた。
そして、私は彼女を見た。
薄暗い環境の中でも、その女はまるで発光体のように眩しかった。
滝のような金色の長髪に、純白の聖衣——聖女リリス!
私の最大の敵。
彼女はゲームのCGよりもさらに美しく、さらに……嫉妬を掻き立てる。
なるほど、魔王様がこれほど彼女に執着するわけだ。
この生まれ持った神聖な気質、この思わず守りたくなってしまうかのような儚げな雰囲気……。
だが、檻の中にいる彼女の姿を見て、私の心には今までにないほどの快感が込み上げてきた。
「リリス……なぜまだ、私を受け入れてはくれない」
魔王様は牢の外に立ち、苦渋に満ちた声で言った。
「アシュラ」
聖女の声は銀の鈴のように澄んでいたが、一切の妥協はなかった。
「私が魔王を愛することなど永遠にありえません。私の心はルークのものです」
アシュラの表情が、瞬時に苦痛に歪む。
「これ以上ないほどの待遇を与えているというのに……」
「監禁は監禁です。どれほど華麗な部屋であろうと、牢獄であることに変わりはありません」
聖女はきっぱりと言った。
「アシュラ、私を帰してください。あなたは私の愛を得ることはできません」
魔王様は長いこと沈黙していたが、やがて背を向けて立ち去った。
私は急いで身を隠し、彼が遠ざかってから再び牢獄に近づいた。
聖女は人の気配を感じたのか、顔を上げて私のいる方を見た。
「そこに誰かいるのですか?」
私は深呼吸をして、影から姿を現した。
ここが正念場だ。私の一生で最も素晴らしい芝居を演じきらなければ!
「あ……あなたが、伝説のリリス様!」
私はわざと驚きと崇拝の表情を作ってみせた。
聖女は警戒した様子で私を見る。
「あなたは誰? なぜこのような場所に?」
「私はアルカディア王国の第三王女、蛍と申します」
私の瞳に涙がみるみる溜まっていく。
「聖女様が魔王に囚われていると聞き、どうしても黙ってはいられなくて……」
「蛍様?」
聖女の表情が少し和らいだ。
「私のために、命の危険を冒してここまで……」
「同じ女性として、あなたが苦しむのを見過ごすことなどできません!」
私は拳を握りしめ、義憤に燃えるふりをした。
「どうか、ここから逃げる手助けをさせてください!」
フフ……。
心の中の本当の考えはこうだ。なんて物分かりの悪い女! 魔王様ほどの美男子に囚われて、どこが苦しいっていうの? 今すぐにでもあなたと代わってほしいくらいだわ。
聖女は私の『善意』に感動したようだ。
「ですが蛍様、もしあなたが私を逃がせば、魔王様はきっとあなたをお許しにならないでしょう……」
「構いません!」
私は並外れた決意を込めて言った。
「覚悟はできています。リリス様、あなたは必ずやルーク様の元へお戻りください!」
とっとと消えなさい、ヒロイン。舞台の主役は交代よ。
私は牢の錠を調べ始めた。魔法の錠は複雑だが、ゲームの中で似たような解錠方法を見たことがある。魔王様が先ほど血を滴らせて扉を開けた際にこっそり採取しておいた血液サンプルを使い、私は見事に封印を解いてみせた。
「早く!」
私は急かす。
「私が時間を稼ぎます!」
聖女は私の手を握り、目に感謝の色を浮かべていた。
「蛍様のご恩は、決して忘れません! 必ずや勇者一行を率いて、あなたを助けに参ります!」
助けに?
お願いだから、私と魔王様の二人きりの世界を邪魔しに来ないでちょうだい。
だが、口から出た言葉は違った。
「お早く! これ以上は危険です!」
リリスは三歩進んでは振り返り、この『自己犠牲』の人間姫に『名残を惜しんで』いるようだった。
聖女が通路の闇に完全に消えるのを見届けると、私はもうこらえきれずに声を上げて笑った。笑い声は牢獄の石壁に何度も反響した。
さようなら、ヒロイン。ここからは私のターンよ。
私はわざと自分の髪飾りを牢の中に残しておいた——我が王家の紋章が刻まれた、精巧な蝶の髪留めだ。
こうすれば、魔王様が聖女の逃亡に気づいた時、この『証拠』を見つけ、『心優しき蛍姫』が聖女の逃亡を阻止しようと危険を冒したのだと知るだろう。
この一歩から、私はゆっくりと彼の人生にとってかけがえのない存在になっていく……。
聖女を失った魔王様は、さぞお苦しみでしょうね?
ご心配なく。すぐにあなたの心を癒す者が現れますから。
そしてその者は、あの聖母気取りの女よりもずっとあなたを理解し、あなたを愛し、そして……決してあなたから離れたりしない。
私は静かに部屋へ戻り、ベッドに横たわって嵐が訪れるのを待った。
あと数時間もすれば、魔王様は聖女が逃げたことに気づくはずだ。
「魔王様」
私はそっと囁いた。
「あなたの傷ついた心を、この私が癒して差し上げます。今度こそ、二度と最愛の人を失わせたりはしません。だって……あなたの最愛の人は、この私なのですから」
