紹介
クズな元カレに吐き捨てられた言葉がまだ耳に残る中、次の瞬間、私が転生したのは乙女ゲームのモブ姫だった!?
現実の男が私の愛を受け止めきれないなら、最強の男を落とせばいいじゃない!
可憐で心優しいホタル姫が、いかにして威厳あふれる魔王様を「手厚いお世話」で骨抜きにし、「魂の契約」でその身も心も縛り付けるのか。
聖女による救済? 正義と悪の対立?
――絶対的なマインドコントロールの前では、すべてが無意味!
「変態」と呼ばれた私が今、自らの手で運命のシナリオを書き換える!
チャプター 1
「変態にしかアンタみたいな女は無理だ!」
元カレの怒鳴り声がまだ耳に響いている。私は六畳一間のボロアパートにうずくまり、彼が残していった、すっかり変な匂いになったTシャツをきつく抱きしめた。
彼の家に監視カメラを四台設置しただけじゃない。バスルームの分なんて、まだ取り付け終わってもいなかったのに! これの何が悪いの?
ただ、彼の動向を常に把握していたいだけ。何を考えて、何をしていて、誰と一緒にいるのか……それを知りたいだけだったのに。
「どうして、どの男も私の愛を受け止められないの?」
涙で視界が滲み、私は壁を思い切り殴りつけた。
二十五歳、無職、振られたばかり。失業保険で三ヶ月連続食いつなぐ……それが真野萤の人生。
まあいい。少なくとも、私には旦那様たちがいてくれる。
パソコンを開き、慣れた手つきで『魔界王座』にログインする。この乙女ゲームが私の唯一の心の拠り所——中には四人の完璧な攻略対象がいるけれど、私が一番愛しているのは、いつだってあの黒髪赤目のラスボスだ。
「魔王様……」
画面に映るその冷徹で威厳に満ちた顔を見つめていると、心臓が勝手に高鳴りだす。
アシュラ、あなたならきっと、私の愛が重いなんて言わないよね?
だけど、いつも攻略が佳境に入ると、あのクソ忌々しい聖女リリスが現れて、その偽善的な聖なる光で私の魔王陛下を奪っていくのだ!
「なんで男って、最後はみんなああいう聖母ぶった女を選ぶのよ……」
怒りと無念がこみ上げ、私は夢中で攻略サイトを漁り始めた。
きっと方法があるはず。魔王様を私だけのものにする方法が!
時間は指先からこぼれ落ち、私は何かに憑かれたようにキーボードを叩き続けた。
コーヒーカップは空になり、コンビニ弁当の容器が小山を築き、目が血走ってもやめようとしない……。
「完璧な攻略法を見つけて……魔王様を永遠に私のものにする……」
七十二時間が経過し、私の身体はついに限界を迎えた。
ドンッ!
頭がキーボードに激突した瞬間、画面の中のアシュラの赤い瞳が、まるで私を見ているかのようにきらめいた気がした。
そして、すべては暗闇に閉ざされた。
「王女殿下、お目覚めですか!」
優しい女の声が、私を混沌から呼び覚ます。目を開けると、自分が華麗な四柱式ベッドに横たわり、雪白のシルクのプリンセスドレスを身にまとい、精巧な銀の冠を戴いていることに気づいた。
ここ……は?
脳内に、突如として膨大な量の見知らぬ記憶が流れ込んでくる——アルカディア王国第三王女萤。父王によって辺境の安寧と引き換えに、魔王への「平和の貢物」として献上される……。
私は目を見開き、ほとんど絶叫しそうなほどの歓喜に内心震えた。
私、転生した! 『魔界王座』の世界に! しかも……。
「あの噛ませ犬の姫になったってこと?」
ゲームの原作シナリオでは、このキャラクターはただの駒で、勇者一行にあっさり救出された後、完全に物語から姿を消す。その唯一の役割は、聖女リリスの偉大さを引き立てることだけ。
だけど今は……。
「今回は、脚本を根こそぎ書き換えてやる」
私は心の中で冷たく笑った。元カレの言う通り、変態にしか私のような人間は受け止められない。ならば、魔王以上にふさわしい相手がいるだろうか?
「萤王女、護送の部隊は準備万端にございます」
衛兵長が恭しく報告する。その目には、これから私が直面する運命への憐れみが満ちていた。
「魔王城は、もう目前に」
「わかりました」
私は表向きはか弱く頷き、内心では興奮に打ち震えながら答えた。
「王女として、それが私の責任ですもの」
責任? 違う、これはチャンスだ! 最高のチャンスだ!
馬車がゆっくりと動き出し、私は車窓から、ゲームで幾度となく目にしたあの黒い魔王城を視界に捉えた。
「アシュラ……」
胸元をそっと撫でると、心臓が激しく脈打っているのがわかる。
ゲームの中で、私は数えきれないほど魔王との出会いを夢想し、彼に抱きしめられる感覚を想像してきた。今、その幻想が現実になろうとしている。
「今度こそ、誰にも奪わせたりしない」
拳を握りしめると、爪が掌に食い込んだ。
聖女リリス? 勇者ルーク?
フッ、絶対的な支配の前では、どんな主人公補正も虚しいものよ。
「魔王様、私の愛を受け入れる準備をなさってくださいね」
近づいてくる魔王城を見つめながら、私の口角は自然と得意げな弧を描いた。現代で疎まれ、捨てられた真野萤はもう死んだ。
今の私は、アルカディアの第三王女萤。
そしてすぐに、私は魔王夫人となり、この世界を手に入れる。
この世界のルールは、私が作る。
「王女殿下、ご到着です」
衛兵の声が響き、私は深く息を吸い込むと、素早く最も完璧な、楚々として憐れみを誘う表情を作り上げた。
今度こそ、絶対に勝つ。
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