第5章

話し合いを始めて一週間が経ち、そろそろ次の段階に進む頃合いだと私は判断した。

「魔王様」

ある日の午後、書斎で私はわざと眉をひそめて彼を見つめた。

「少しお疲れのご様子ですね」

魔王は手にしていた政務の書類から顔を上げ、私に視線を向けた。

「最近は確かに少々疲れている。だが、大したことではない」

「そんなのはいけません!」

私はすぐさま心配そうな表情を作ってみせた。

「魔王様はまだ回復期でいらっしゃいます。完全に元通りになるためには、全方位的な療養が必要だと存じます」

魔王はわずかに目を見張った。

「全方位的な、療養?」

私は頷き、さも真面目な顔で言った。

「はい。心の傷は、簡単な言葉をいくつか交わしただけで癒えるものではございません! 真の回復とは、食事、睡眠、生活習慣といった、あらゆる側面から取り組む必要があるのです」

もちろん、これは私の完全なでっち上げだ! だが、とても専門的に聞こえるだろう?

「もし、私を信じてくださるのなら」

私はこれ以上ないほど誠実な眼差しで彼を見つめた。

「どうか、あなたの身の回りのお世話を、この私にさせてはいただけないでしょうか」

魔王は数秒間沈黙し、それから頷いた。

「わかった」

やった! その日から、私は正式に魔王の『プライベート・アドバイザー』へと昇格した。

まず、私は『栄養管理』を名目に、魔王の食事を管理し始めた。

「魔王様、これらをご覧くださいませ。一体何でございましょう?」

私は彼が普段口にしている簡素な食事を指さし、わざとらしく驚いてみせた。

「このような単調な食事で、気力が回復するはずがございませんわ」

私は毎日、彼のために考え抜かれた料理を用意し始めた。

ゲームで学んだ料理の知識を活かし、ハーブを効かせた肉のロースト、色とりどりのスープ、特製のデザート……様々な美味しいものを作り出した。

「蛍、このスープは実によい味だ」

魔王は私が作ったきのこのスープを一口味わい、その目に驚きをちらつかせた。

「城の料理人が作るものよりずっといい」

「よかったですわ!」

私は満足げに微笑んだ。

数日も経たないうちに、魔王は完全に私の料理の虜になった。

「蛍、今日の夕食はまだか? 少し腹が減ってきてな……」

魔王からそう尋ねられた瞬間、私は内心で狂喜した。彼はもう、私の世話に慣れ始めている。次は、生活リズムの調整だ。

「魔王様、また夜更かしをなさいましたの?」

私は彼の目の下の隈を見て、わざと心を痛めたような表情を浮かべた。

「目の下に隈ができておりますわ!」

「魔族の務めは多くてな……」

魔王は少しばつが悪そうに説明した。

「いけません!」

私は厳粛な口調で言った。

「今は回復期なのですから、十分な睡眠を確保しなければ。この蛍の努力を水の泡になさらないでくださいましね!」

私は詳細な『健康作息表』を作成し、魔王に時間通りの休息を促した。

彼がきちんと眠れるように、私は自ら寝かしつけることまで申し出た。

「そ、それは……よいものか?」

魔王の顔が微かに赤らむ。

「問題ございません」

私はあくまで専門家として振る舞った。

「これも看護の一環ですわ! 私は椅子に座って、魔王様が安らかにお眠りになるのを見守っておりますので」

そして実際に彼のベッドサイドに座り、優しく子守唄を口ずさむと、魔王の表情が次第に和らいでいくのが見えた。計画がまた一歩成功したことがわかる。

それから、社交……。

「陛下、本日は軍事会議が……」

魔族の将軍が報告に訪れた時、私はすかさず口を挟んだ。

「将軍様」

私は穏やかに言う。

「陛下は今、負荷の大きいお仕事を減らす必要がございます。この会議は、日を改めることはできませんでしょうか?」

魔王は私と将軍を交互に見て、言った。

「蛍の言う通りだ。明日に延期しよう」

そして、最も肝心な身体のケア。

「陛下、肩がとても凝っていらっしゃいますね」

ある日、私はわざと彼の背後に回り込んだ。

「長時間のデスクワークはお身体によくありません。わたくしが揉んで差し上げましょう」

「こ、これは……」

魔王の身体が明らかに強張った。

「リラックスしてくださいませ。マッサージは心身ともにとてもよいのですわ!」

私の声は優しく、しかし手はすでに彼の肩にそっと置かれていた。

「蛍の専門的な判断を、お信じください」

私の指が彼の首筋を優しく撫でると、魔王の身体の敏感な反応が伝わってくる。このような親密な接触を拒める男性などいない。

マッサージの他にも、髪を整え、爪を切り、服装を選ぶことまで申し出た……。

「蛍、そこまで骨を折らなくてもよいのだぞ……」

魔王は少し照れくさそうに言った。

「いいえ、お辛くなどありませんわ」

私は彼の髪を優しく梳かしながら言った。

「魔王様のお世話をできることが、わたくしにとって最大の喜びなのですから」

一ヶ月後、効果は明白だった。魔王様は完全に私の世話に慣れきり、私が少しでもそばを離れると不安を感じるほどになっていた。

「蛍はどこへ行った? なぜまだ戻らん?」

ある日、私が庭園へハーブを摘みに行っていると、魔王は部屋の中を苛立たしげに歩き回っていた。

「蛍姫様は、新鮮なハーブを摘みに行くと……」

侍女が答える。

「ハーブを摘むのに、それほど時間がかかるものか?」

魔王の声には、明らかに焦りが滲んでいた。

私が戻ると、魔王は心底ほっとしたような表情を浮かべていた。

「魔王様、お待たせいたしました!」

私は摘んできたハーブを手に部屋へ入る。

「魔王様がお好きなハーブを摘んでまいりましたわ」

「蛍……ようやく戻ったか」

魔王は途端に緊張を解いた。

「お前がそばにいないと、どうにも落ち着かなくてな」

私は内心で歓喜の声を上げながらも、表向きは優しく言った。

「それは、わたくしたちの間の繋がりが、ますます深まっている証拠ですわね。魔王様、わたくしも一刻たりともあなたのそばを離れたくありません」

魔王は真剣な眼差しで私を見つめた。

「蛍、気づいたのだ。私はもう、お前の存在に慣れてしまった。お前のいない日々など、想像もできん……」

私は彼の頬を優しく撫でた。

「でしたら、永遠に離れなければよいのです。魔王様、蛍は一生涯、あなたのことをお世話させていただきたいと願っております」

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