第6章

ただ生活の上で依存させるだけでは、まだまだ足りない。私が欲しいのは、全方位にわたる完全な支配!

「魔王様」

ある朝、彼の衣装を整えながら、私はわざと心配そうな表情を浮かべた。

「昨日、魔族の将軍の方々と会議をなさっていた時、外まで激しい声が聞こえてまいりました……何かあったのですか?」

魔王はボタンを留める手を止め、ぴくりと動いた。

「ただの国境防衛に関する口論だ。大したことではない」

「ですが、そのようなことで魔王様がお心を乱されるのではないかと、私は心配で……」

私は優しく彼の襟元を直しながら言った。

「これからは、そういった重要な会議の折、お側に侍らせてはいただけませんでしょうか? 要点を記録したり、いつでもお茶をご用意したりできますわ」

魔王は私の気遣わしげな眼差しを見つめ、頷いた。

「わかった。蛍はいつもかくも細やかだな」

こうして、私はごく自然な形で魔王の政務に関わることになった。

名目は「お側に侍る」こと。だが実際には、私は全ての機密議論を耳にし、魔族内部の権力構造を把握し、そして何より、全ての魔族が魔王の心における私の特別な地位を目の当たりにすることになったのだ。

「蛍様、この提案についてはいかがお考えですかな?」

ほどなくして、一部の魔族の将軍たちが自ら私の意見を求め始めた。

「私はただの人間の姫ですもの。そういった軍事のことはよく分かりませんわ……」

私はあえて謙遜してみせ、時折「何気なく」自分の意見を口にした。

魔王はしばしば頷いて同意する。

「蛍の考えは理に適っている。そのように進めよう」

一月後、魔王城全体にある事実が知れ渡った。魔王に自分の提案を受け入れさせたいのなら、まず蛍様の支持を得るのが最善である、と。

次なるは、通信の掌握……。

「魔王様、お休みになられている時にいつも誰かが訪ねてきては、お身体の回復によくありませんわ」

私はわざと眉をひそめてみせた。

「よろしければ、私が取り次ぎをいたしましょうか? 重要なご用件はすぐにでもお伝えし、さほど急ぎでないものは後ほど処理できるようにいたします」

「それは、そなたに面倒をかけすぎではないか?」

魔王は少し申し訳なさそうだった。

「いいえ、少しも面倒ではございません!」

私は嬉しそうに振る舞った。

「魔王様のお役に立てることが、私の何よりの喜びなのですから」

こうして、私は魔王と外部とを繋ぐ中継点となった。

魔王に会いたい者は誰であろうと、まず私の「選別」を通らなければならない。

「蛍様、東境の守将が陛下への謁見を求めておりますが……」

「魔王様は昨夜、政務でお疲れです。午後にまた来るようお伝えください」

「蛍様、魔法使いギルドより招待状が届いております……」

「そのような社交の場は魔王様のお心を消耗させますわ。丁重にお断りなさい」

少しずつ、私は魔王が他の魔族と接触する時間を減らし、彼を私だけのものにしていった。

私はさらに「より良い休息環境を整える」という名目で、魔王の私室を徹底的に改造した。

四柱式ベッドは淡い紫色の紗の帳で囲われ、枕元には私が毎日取り替える生花が飾られている。部屋には精巧な通信石を設置し、私が側にいなくとも、魔王がいつでも私に連絡できるようにした。

化粧台には私が魔王のために厳選したスキンケア用品が並び、衣装棚の服は全て私の好みに合わせてコーディネートし直した。部屋の隅には心地よい読書スペースを設け、毎晩そこで魔王に眠る前の物語を読んで差し上げる。

最も特別なのは、ベッドの脇に置かれた小さな鈴だ。魔王がそれを軽く揺らせば、私はすぐに現れる。

「蛍、この鈴は……」

魔王は少し戸惑っていた。

「こうすれば、何かお望みのことがあればすぐに私をお呼びになれますわ」

私は微笑んで説明した。

「たとえ夜中に悪夢をご覧になったとしても、すぐに駆けつけてお側にいられます」

数日も経たないうちに、魔王はこの鈴を頻繁に使うようになった。

眠れない時、水が飲みたい時、時にはただ私の声が聞きたいというだけの時もあった。

「蛍……来てくれたか」

私が現れるたび、魔王の瞳には安堵の色が浮かんだ。

私はまた、自身に忠実なメイドたちを育て上げ、魔王城中に広がる情報網を築き上げた。

「アリス、魔王様は本日どなたとお会いになりました?」

「姫様、ご報告いたします。陛下は本日三名の将軍とお会いになり、会話の内容は主に軍備についてでございました」

「お食事の際の魔王様のご様子は? 何か特別な反応はありましたか?」

「陛下はご機嫌麗しいご様子で、姫様がお作りになったスープをお褒めになっておりました……」

この方法によって、魔王城で起こるいかなる出来事も、私の目から逃れることはなくなった。

一月後、私の支配体制は成熟した。

「本日、三名の将軍が謁見をお求めですが、昨夜はあまりお眠りになれなかったご様子。午後に延期いたしましょうか?」

朝、私は優しく魔王の意見を伺った。

「うむ……蛍の言う通りだ。そなたの采配に任せる」

魔王はためらうことなく同意した。

数名の魔族の将軍たちが陰で不満を漏らしているのが聞こえる。

「近頃、陛下にお会いするのがどうしてこうも難しいのだ? 何事も蛍姫様の許可を通さねばならんとは……」

だが、彼らに異を唱える勇気はない。魔王の私への寵愛は誰の目にも明らかだからだ。

「東境の防衛問題につきましては、もっと穏健な策を用いる方がよろしいかと。今の魔王様のご威光があれば、必ずしも武力で解決なさる必要はございませんわ」

「蛍の考えはいつも理に適っている……」

魔王は真剣に考え込んでいる。

「そなたの言う通りにしよう」

他の魔族たちの驚愕に満ちた表情を見て、私の心は言いようのない得意な気持ちで満たされた。

魔王の分離不安は、日増しに深刻になっていく……。

「蛍、今日のそなたは、この深青のドレスがいいのではないか?」

魔王が自ら私の意見を求めるようになった。

「その色はそなたの瞳によく映える」

私は従順に彼に衣装を整えさせ、この必要とされる感覚を享受した。

私が時折「体調が優れない」と側にいられない時、魔王は明らかに不安な様子を見せる。

「申し訳ありません、魔王様。本日は少し頭が痛むものですから、お側に侍ることができそうにありません……」

「何? 具合が悪いのか?」

魔王はすぐさま手元の政務を放り出し

「治癒術師を呼ぼうか? 今日は何もせん。そなたの側で休むことにする」

一日中、魔王の仕事の効率はほぼゼロだった。

「そなたが側にいないと、私は何も手につかぬ……」

彼は私の手を握り、その瞳は依存の色に満ちていた。

「早く良くなってくれ」

メイドたちも陰で噂をし始めた。

「蛍姫様は本当にすごいわ。陛下はもう、姫様なしではいらっしゃれないのね……」

「しっ! 声が大きいわよ。蛍姫様が陛下にあれほど良くしてくださるのだから、私たちは感謝すべきでしょう」

夜、私が魔王のベッドの脇に座り、眠る前の物語を読んで差し上げていると、彼の安らかな表情を見て、私の心は満足感に満たされた。

「蛍、今夜はずっと側にいてくれるか?」

魔王は甘えるように私を見つめた。

「近頃は、そなたの声を聞きながらでないと安らかに眠れなくてな……」

「もちろんですわ。ずっとお側におります」

私は優しく彼の髪を撫でた。

「どうぞ、ご安心してお休みください。どこへも行きませんから」

「蛍……私はもう、そなたなしではいられぬようだ。この感覚は少し恐ろしいが、手放したくもない……」

私は彼の額にキスをした。

「恐れることはありませんわ。それは私たちの心が、完全に繋がり合ったという証拠です。私も、同じように魔王様なしではいられませんもの」

魔王が安心して目を閉じるのを見て、私の心は狂喜に打ち震えた。

今の彼は、もう私の掌中の珠だ。

「ならば、こうして永遠に共に……蛍」

彼は夢うつつにそう呟いた。

私の、空気を読めなかった元カレよ!

今なら分かるかしら? 本当の支配とは何かということが。

これこそが愛の至高——相手が自らの意思で全てを差し出すように仕向け、それこそが幸福なのだと信じ込ませること。

さて、次は……目障りな魔族たちを始末するとしましょうか。

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