第146章:過去の記憶

アストリッドは鍵を手にしっかりと握りしめ、足を踏み出して中へ入ろうとした。だが、わずか二歩進んだところで立ち止まった。

家に帰らずにこんなに遅くまで外にいるのは初めてのことだったし、どうやら夜明け前には戻れそうになかった。サイラスに知らせておいたほうがいいだろう。

メッセージを送信すると、アストリッドはスマートフォンをバッグにしまい、再び中へと足を進めた。

鉄の扉はまだらな埃に覆われ、すでにすっかり錆びついていた。そっと押すと扉は軋みながら揺れ、空中に埃が舞い上がった。

アストリッドは埃にむせて二、三度咳き込み、慌てて数歩後ずさりすると、目の前の空気を払うように手を振った。埃が落ち着く...

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