第29章前に進む

「そう言ってくれて、ありがとう」アストリッドは平静を保って言った。

サイラスの権力と影響力をもってすれば、彼女が屈辱を味わう姿を面白半分に眺めることなど容易だったはずだ。

しかし、彼はその状況を利用するどころか、全く逆の行動をとった。彼女を慰めてくれたのだ。

アーサーの冷酷さやオリバーの裏表のある裏切りと比べれば、たとえそれが心にもない言葉だったとしても、アストリッドはサイラスの言葉に心から感謝していた。その言葉のおかげで、彼女の心はふっと軽くなったのである。

アストリッドは、感謝の気持ちを忘れるような人間ではなかった。

彼女はベッドから起き上がり、バスルームに入って鏡に映る自分の姿...

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