第6章

絵麻の視点

二週間。この二週間、私は地獄を生きている。

会場の写真集をめくると、指が震える。庭園は美しい。美しすぎるほどに。バラに飾られた白いアーチ。それはかつて、日曜の朝、まだ半分眠っている頭で私が涼介に語った光景そのものだった。

スマホが鳴る。花屋からだ。

「鈴木さん、確認です。白いバラが五百本、シャクヤクが三百本ですね」

その数字一つひとつが、私の胸を突き刺す。

「ええ。それで合ってます」

「素敵な組み合わせですね。花嫁さんはセンスがいい」

無理に明るい声を作る。「本当にそうですね」

電話が切れる。スタジオに静寂が満ちる。デスクに座り、虚空を見つめる。手が...

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