第10章 ご主人はあなたに本当に優しい

だめ、焦っちゃ。まだ目的は果たしていない。ここで結人に愛想を尽かされるわけにはいかなかった。

 彼女はどうにか理解ある笑みを作る。

「……わかったわ。結人もちゃんと身体に気をつけて。無理しすぎないでね。またあとで、あなたとおばさまの様子を見に来るわ」

 そう言い残し、小林莉那は病室をあとにした。

 けれど背を向けた瞬間、その顔から笑みはすっと消える。代わりに落ちてきたのは、ぞっとするほど冷えた色だった。

 吉野結人は、もう莉緒のことを気にかけ始めている。

 となれば、あの二人の関係は、自分が思っていたよりずっと厄介だ。

 何としてでも、結人の意識を莉緒から引き剥がさなければなら...

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