第106章 あの女は逃げた

 扉の外には、背の高い金髪碧眼の男が立っていた。端正な物腰。柔らかな笑み。いかにも紳士然としている。

 男は浅野莉緒に穏やかに微笑みかける。

「こんばんは。お着替えのところ、失礼いたします。パートナーを探しておりまして……少し飲みすぎたようで、トイレへ行くと言ったきり戻らないんです。こちらには来ていませんでしょうか? 背丈はこれくらいで、黒のミニドレスを着ています」

 男は手で大まかな高さを示した。

「見てません」

 浅野莉緒は即答した。

「今、着替え中です。誰も入ってきていません」

 男は笑みを崩さず、うなずく。

「そうでしたか。大変失礼いたしました。ただ、誤解が生じないよ...

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