第108章 地球の裏側まで恥を晒す

 朝の光が差し込む窓辺で、浅野莉緒はミルクを口にしていた。

 パリの朝は、驚くほど静かだった。身体の力がすっと抜けていくような、心の奥までやわらいでいくような静けさ。もう二度と、胸を痛めるものなんて何ひとつない――そんな錯覚さえ覚えるほどに。

 お腹の赤ちゃんも、この穏やかさを感じ取ったのか、くんと小さく動く。

 浅野莉緒は思わず口元をゆるめ、そっと手のひらを下腹部に重ねた。

 そのとき――

 ピンポーン!

 澄んだチャイムの音が唐突に鳴り、室内の静寂をぱりんと破った。

 浅野莉緒はわずかに眉をひそめる。

 安藤里穂が来るのは午後のはずだ。こんな朝早くに?

 彼女はグラスを...

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