第117章 証拠も根拠もなく、勝手に言ってはいけない

川崎綾人がパリに滞在していた数日のうち、帰国前夜にちょうど、浅野莉緒が二か月近く準備してきた個展の初日が重なった。

 当然、川崎綾人も顔を出すつもりでいた。表向きの理由は――安藤里穂に頼まれたから。仕事が立て込んで来られない彼女の代わりに、浅野莉緒のことを見ていてほしい、と。

「安藤さんからきつく言われてるんだ。絶対に莉緒をちゃんと見ててくれって。もし何かあったら、帰国した僕が空港で捕まる羽目になる」

 川崎綾人は浅野莉緒の背後に回り、そっとネックレスを留めた。

「莉緒だって、僕が着いた途端に空港で待ち伏せされるのは困るだろ?」

 そう言って、片目をつぶってみせる。

 温和で端正...

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