第119章 莉緒、君に優しくするのは君を泣かせるためじゃない

「先輩? 川崎綾人先輩? ねえ、返事してよ……! やめて、怖がらせないで……!」

 混乱のさなか、浅野莉緒の指先がふいに、川崎綾人の肩に触れた。ぬるり、と粘つく感触。

 ――血だ。

「ち……血……こんなに……やだ、やだ……!」

 頭の奥がぶんっと鳴って、涙が唐突に溢れ落ちた。

「川崎先輩! 起きて! お願い、私を見て……私を見てよ!」

「……や、やめ……揺らすな……」

 抱えた身体が、かすかに息を吸う音を立てた。

 浅野莉緒の動きがぴたりと止まる。

「先輩! 目、覚めたの? 大丈夫!? 動かないで、今……今、呼ぶから! イヴァ! イヴァ、どこ!? 来て、お願い!」

「浅野...

ログインして続きを読む