第15章 犬と寝たと思えばいい

 莉緒の青ざめた頬に、涙の跡が幾筋も絡みついているのを見て――吉野結人は、彼女の顎をつかんでいた指先を、ほとんど気づかれないほどきゅっと縮めた。

 俺は、さっき……何をした?

 抱きたかった?

 この女を?

 結婚して丸5年。あの一度の泥酔の夜を除けば、彼女はずっと、結人の欲を一度だって掻き立てなかった。なのに今しがた――笑えるほどくだらない「嫉妬」みたいなものに突き動かされて、身体の奥が、ぞっとするほど熱くなった。

 嫉妬?

 あるわけがない。

 けれど、燃え上がったままの欲望に、さっき彼女が“あの男”と一緒にいるのを見たときの、言葉にならない感情が絡みつき、どうしても鎮まら...

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