第183章 あなたは優しすぎる

 佐藤菜月は首を横に振った。涙が音もなく頬を伝い、顔じゅうを濡らしていく。

「もういい……莉緒、みんな……私のことは放っておいて……」

 そう呟くと、彼女は身を翻し、安藤真哉のほうへ歩いていった。

 安藤真哉は手を伸ばして彼女を受け止め、そっと肩に腕を回す。怯えた妻を宥める、気遣い深い夫――そんなふうに見える仕草だった。

 けれど佐藤菜月の身体は、その手が触れた瞬間、びくりと硬直した。

 安藤真哉の表情が一瞬だけ陰る。だがすぐに、何事もなかったかのような穏やかな笑みが顔いっぱいに広がった。

「菜月、怖がらなくていい。帰ろう」

 浅野莉緒には、佐藤菜月の肩が小刻みに震えているのが...

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