第187章 彼女の邪魔をしてはいけない

 彼女のそばには――かつての小さな女の子に戻してくれて、あの頃みたいに無邪気に、思いきり笑わせてくれる人がいる。

 それは、きっといいことだ。喜ぶべきことだ。

 なのに吉野結人の目の縁は、やはり赤く染まっていた。

 彼は顔を背け、マウスを握りしめると、ひとつのドキュメントを開く。写真から視線を引きはがすように、自分を無理やり仕事へ押し戻した。

 昼前。

 オフィスのドアが、コンコンと控えめに叩かれた。

 秘書が入ってきて、書類を一部、そっと吉野結人の前に置く。

「吉野社長。最近、ひとつ案件が出まして。今の社長に合った案件だと思ったんです。ご検討いただけませんか? 社長が広げてい...

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