第189章 お宅の監督が来た

 浅野莉緒は、佐藤菜月の瞳に揺れる涙の光を見て、自分の胸の奥までじんわりと酸っぱくなった。

 それでも彼女はやわらかな笑みを浮かべ、そっと佐藤菜月の手の甲を軽く叩く。

「ほんとに気にしなくていいよ、菜月。今のあなたにとっては、掴めるものは何でも掴んでおくのが大事だから」

 安藤里穂も、間の取り方を心得たように口を挟んだ。

「そうそう。仕事は仕事、気持ちは気持ち。うちの菜月は優秀なんだから、誰と組んだって結果は出るでしょ。稼げるなら、それはいい話!」

 佐藤菜月は照れたように視線を落とし、青白かった頬にようやく淡い赤みが差す。

 唇をきゅっと結び、小さな声で言った。

「安藤社長…...

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