第190章 死ねよ

 双方はほどなく、ひとまずの方向性を固めた。空気は終始、驚くほど穏やかだった。

「細かい部分については、法務に急ぎ契約書のドラフトを作らせます。でき次第、メールでお送りします」

 秘書はタブレットをしまい、すっと立ち上がる。

 佐藤菜月も慌てて立った。

「わざわざお越しいただいて、ありがとうございました。出口までお送りします」

 二人は前後して個室を出て、静かな廊下を歩き出した。

 だが、二歩も進まないうちに――秘書の足が、ほんのわずか止まる。

 視線が、少し先で帰ろうとしている一組に吸い寄せられたのだ。

 見ただけで「大事にされている」とわかる男女。

 男は品のある佇まい...

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