第232章 あれは浅野和夫の秘書ではないか

浅野莉緒は川崎綾人を見た。

 彼もさっき、あの影を見ている。いまの莉緒の視線と合わせれば、彼女が何を疑っているのか――綾人には一瞬でわかった。平田湊が、この母子を見張らせ、余計なことを喋らせないために張りつけた人間ではないか、と。

「綾人」

 莉緒が声を落とす。

「追って。慎重に。気づかれないように」

 川崎綾人の目が鋭くなる。すぐにエンジンをかけ、車を滑らせるように車列へ紛れ込ませた。前を走る古いベンツの後ろへ、近すぎず遠すぎず――絶妙な距離でつく。

 相手に気づかれていないと確信すると、綾人はスマホを取り出し、通話をつないだ。

「対象は黒の旧型メルセデス・ベンツS500。ナ...

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